猛暑時代の“上手な運動”との付き合い方
「暑いですね」
最近では、夏のあいさつが、そのまま“危険への注意喚起”のようになっています。
毎日のようにテレビでは猛暑のニュースが流れ、熱中症警戒アラートが発表される。
最高気温40度以上の日を「酷暑日」と呼ぶ動きも出てくるなど、日本の夏は、これまでとは明らかに違う暑さになっています。
実際、2025年夏は、日本の平均気温が統計開始以来で最も高くなり、国内最高気温となる41.8℃を記録。
さらに、5月から9月までの熱中症による救急搬送者数は100,510人となり、調査開始以降で最多となりました。
「今日は外に出ない方がいい」 「運動なんて危ない」
そう感じる人が増えるのも当然です。
実際、熱中症は命に関わる危険があります。
スポーツ庁や環境省も、暑さの中での運動には十分注意するよう呼びかけています。
熱中症リスクの目安となるのが、「WBGT(暑さ指数)」です。
これは気温だけではなく、湿度や日差し、地面からの照り返しなどを含めて算出される指標で、熱中症予防の基準として世界的にも使われています。

環境省によると、WBGTが28度を超えると「厳重警戒」。
31度以上になると「危険」とされ、運動は原則中止レベルになります。
つまり、「昔は平気だったから大丈夫」は、もう通用しない時代になっているのです。
“動かない夏”が増えている
最近は、便利な時代になりました。
スマートフォンひとつで食事も届き、買い物もできる。
動画やゲームも充実していて、エアコンの効いた部屋から出なくても、一日を過ごせます。
猛暑の日に「今日は家から出ない」という選択は、決して悪いことではありません。
むしろ、危険な時間帯の外出を避けることは大切です。
ただ、その一方で、“動かない生活”が続くことにもリスクがあります。
運動不足になると、筋力が落ち、体力も低下します。
汗をかく機会が減ることで、体温調整機能も弱くなっていきます。そして、久しぶりに動いた日に熱中症になる。

実は、こうしたケースは少なくありません。
特に注意したいのが、「暑熱順化(しょねつじゅんか)」です。
これは、簡単に言えば「暑さに体を慣らすこと」。
汗をかく習慣がある人は、体温調整がしやすくなります。
逆に、ずっと冷房の効いた部屋で過ごしていると、暑さへの対応力が落ち、熱中症になりやすくなるのです。
つまり、暑い時期だからこそ、“少しづつ汗をかく習慣”が重要になります。
「頑張る運動」ではなく、「続けられる運動」を
とはいえ、炎天下で無理に運動する必要はありません。
大切なのは、「暑さの中でどう安全に動くか」です。
例えば、ウォーキングなら昼間ではなく、早朝や夜の比較的涼しい時間帯に行う。
日陰の多い場所を選ぶ。距離や時間を短くする。
それだけでも、体への負担は大きく変わります。
最近では、夏の高校野球・甲子園でも、最も暑い時間帯を避けるために「二部制」が導入されています。
競技スポーツの現場でも“暑さを避ける工夫”が当たり前になっているのです。
だからこそ、私たち一般市民も、「根性で乗り切る」という考え方を変えていく必要があります。
特に中高年世代は、「これくらい平気」「昔は水を飲まずに運動した」という感覚が残っていることもあります。
しかし、今の暑さは“昔の夏”とは違います。
「無理をしない」 「休む」 「避ける」
それは甘えではなく、熱中症を防ぐための正しい判断です。
室内でも、体は動かせる
「外に出るのが危険なら、運動は無理」
そう思う人もいるかもしれません。
ですが、運動は必ずしも屋外で行う必要はありません。

空調の効いた室内でも、できることはたくさんあります。
- 軽いストレッチ
- スクワット
- ラジオ体操
- ヨガ
- 自宅での筋力トレーニング
短時間でも、体を動かす習慣には十分意味があります。
また、最近は会員でなくても利用できるジムも増えており、「暑い日は室内施設を活用する」という選択肢も身近になっています。
大切なのは、“ゼロにしない”こと。
毎日少しでも動くことが、夏バテや体力低下の予防につながります。
水分補給は「喉が渇く前」が基本
そして、夏の運動で最も大切なのが水分補給です。
熱中症は、体内の水分や塩分が失われることで起こります。
特に汗をかく夏場は、自分が思っている以上に体の水分が失われています。
だからこそ、「喉が渇いた」と感じる前に飲むことが重要です。
運動前に水分をとる。運動中、運動後もこまめに補給する。
大量に汗をかいた時は、スポーツドリンクなどで塩分も補う。
これが、熱中症予防の基本になります。また、休憩も欠かせません。

サッカーの国際大会では、試合中に「給水タイム」が設けられることがあります。
世界のトップアスリートですら、暑さの中では“休みながら戦う”のです。
「休むこと」も、立派な暑さ対策です。
“体を冷やす”という新しい熱中症対策
こうした状況を受け、日本スポーツ協会(JSPO)は2025年、「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」を改訂しました。
従来の水分補給や休憩だけではなく、新たに「身体冷却」の重要性が盛り込まれています。

例えば、首元や脇を冷やす、冷却ベストや氷を活用するなど、“体を冷やすこと”そのものが、熱中症対策として重要視され始めています。
近年の猛暑は、単に「水を飲めば大丈夫」というレベルを超えつつあります。
だからこそ、暑さを避ける、休む、水分をとる、そして体を冷やす——こうした対策を組み合わせることが重要になっています。
猛暑時代に必要なのは、“上手に動く”こと
スポーツ庁でも、「暑いから運動をやめる」のではなく、適切な対策を講じながら、安全にスポーツ・運動を継続することが重要だと呼びかけています。
また、「運動・スポーツにおける安全対策の評価・改善のためのガイドライン(試行版)」でも、熱中症を防止するための対策を含め、運動・スポーツに関わるすべての人が安全対策に取り組むことの重要性が示されています。
自治体に対しても、熱中症予防ガイドブックや、暑熱対策設備に活用できる助成制度の利用を促しています。
猛暑は、もはや一時的な異常気象ではなく、“新しい夏の日常”になりつつあります。
だからこそ必要なのは、「気合い」や「我慢」ではなく、正しい知識と準備です。
WBGTを確認する。 無理をしない。 こまめに休む。
水分だけでなく、体も冷やす。
そして、自分のペースで“気持ちよく続けられる運動”を見つけること。
それが、猛暑時代を健康に乗り切る、一番のコツなのかもしれません。
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