「動く理由が足元にある。」―スポーツ庁「シュープロ」始動
新しい靴を履くと、外に出たくなる――。
それがスニーカーなら、少し歩いてみたくなる、走ってみたくなる――。
そんな、誰もが一度は感じたことのある「靴」と気持ちの関係に着目した、新たなプロジェクトが始まりました。
その名も「シュープロ」。
スポーツ庁がスタートさせた、靴をきっかけに日常の中で体を動かす人を増やしていこうという新しい取り組みです。

「運動しよう」ではなく、まずは足元から
「シュープロ」とは、「シューズ」と「プロジェクト」を組み合わせた造語です。
スニーカーなどをはじめとした「靴」にフォーカスを当て、靴を選ぶ、履き替える、使うといった身近な行動から、運動やスポーツの促進につなげていこうという試みです。

この「シュープロ」は、9月2日より賛同団体による取組が本格的に始動しました。
背景にあるのは、スポーツ実施率の伸び悩みです。
スポーツ庁では、健康寿命の延伸に向けてスポーツ実施率の向上を目指し、これまでもさまざまな施策を行ってきました。
しかし、2025年度の調査では、週1回以上スポーツをする成人(20歳以上)の割合は51.7%。現在のWebアンケート調査方式となった2017年度(51.5%)から、ほぼ横ばいの状態が続いています。
特に目立つのが、男女ともに20代から50代の働き盛り・子育て世代のスポーツ実施率の低さです。
「仕事や家事、育児に忙しく、時間がない」 「身近に運動できる環境がない」
こうした理由から、運動やスポーツから遠ざかってしまう人も少なくありません。
単に「運動しましょう」「スポーツをしましょう」と呼びかけるだけでは、実際の行動につなげることは容易ではありません。
そこで発想を変えました。
「運動」や「スポーツ」を前面に出すのではなく、まずは足元から。
「靴」を見直すことを、体を動かす最初のきっかけにしようというのが「シュープロ」の考え方です。
靴が変われば、行動が変わるかもしれない
自分に合った靴や動きやすい靴を履く。
それだけでも、いつもより少し歩いてみよう、階段を使ってみよう、休日に外へ出てみよう――そんな気持ちが生まれるかもしれません。
その小さな変化が、ウォーキングやジョギングなど、身近な運動を始めるきっかけとなり、スポーツの実施、さらにはウェルビーイング(充実感や幸福感)の向上へとつながっていく。
そんな好循環を生み出すことを、このプロジェクトは目指しています。
合言葉は、
「動く理由が足元にある。さあシュープロしよう!」
まずは靴を選ぶ、購入する、贈る、履き替える、使うことから。
スニーカーなどの動きやすい靴を履くことで気持ちが変わり、日常の行動が変わる。その積み重ねが、スポーツをする人の増加にもつながっていく。
「シュープロ」には、そんな将来像が描かれています。
働き方の変化も「シュープロ」の追い風に
かつてのビジネスシーンは、服装や靴に一定の慣習がありましたが、昨今それも大きく変化しています。
もちろん職種による違いやTPOへの配慮は必要ですが、スニーカーで通勤することも珍しいものではなくなりました。スーツに白いスニーカーを合わせるビジネスパーソンの姿も、日常的に見られるようになっています。
こうした変化の一つの契機となったのが、2005年に環境省が提唱した「クールビズ」です。
「ノーネクタイ、ノージャケット」が定着し、バッグも両手を自由に使えるリュックタイプが普及するなど、ビジネススタイルはより働きやすく、動きやすい方向へと変化してきました。
そして今、その変化は「足元」にも広がっています。
通勤や仕事など毎日の生活の中で動きやすい靴を選ぶことが当たり前になれば、「スポーツをするための時間」を特別につくらなくても、日常の中で自然に体を動かす機会を増やしていけるかもしれません。
キーワードは「共創」。異業種が靴でつながる
河合長官は、このプロジェクトのテーマとして「共創」を挙げました。

立場の異なるさまざまな企業や団体が、「靴」という共通のテーマを通して協力し合いながら、新しいムーブメントを生み出していく。
プロジェクトのキックオフとして8月27日に行われた記者会見にも、この時点で参画が決まっていた企業や団体が顔をそろえました。
スポーツ用品メーカー、小売業、旅行会社、フィットネスクラブ、一般企業、さらに自治体まで、11の企業・団体がトークショーに参加。
一見すると異なる分野で活動する企業・団体が「シュープロ」のもとに集まり、それぞれの強みを生かしながら新たな価値を生み出そうとする姿は、まさに「共創」を象徴する光景となりました。
自分に合った一足を見つけることから
会見会場では、参画企業がそれぞれブースを設け、「靴」と「動くこと」にまつわる取り組みを紹介しました。
スポーツ用品小売業のゼビオによる3D足型測定サービスを視察した河合長官は、
「今度は測ってから買いたい」
とコメント。
同社副社長執行役員の中村孝昭氏も、
「靴の選び方ひとつで日常生活は変わります」
と、靴選びの重要性を語りました。
自分の足を知り、自分に合った靴を選ぶ。
「スポーツを始める」と考えると少しハードルが高く感じても、「自分に合った一足を見つける」ことなら、気軽に始められるのではないでしょうか。
そこから「歩いてみよう」「少し遠くまで行ってみよう」という気持ちが生まれれば、それも立派な第一歩です。
「動く理由」は、すぐ足元にある
足元から始まる行動変容。
誰もが自分に合った動きやすい靴を選び、それを自然に履ける社会になれば、私たちの日常はもっとアクティブになるかもしれません。
「少し歩こう」 「今日は階段を使おう」 「ちょっと遠回りして帰ろう」
そんな一人ひとりの小さな行動の積み重ねが、やがてスポーツをする人を増やすことにつながっていく可能性があります。
河合長官は、
「時間はかかるかもしれませんが、地道に頑張っていきます」
と、プロジェクトの将来への期待を語りました。
そして会見の最後には、こんな一言も。
「取材の時は、みなさんも気になさらずスニーカーで来てください」
その長官の足元には、いかにも動きやすそうな白いスニーカーが光っていました。
「動く理由が足元にある。」
シュープロの第一歩は、私たちが明日履く一足から始まるのかもしれません。
「シュープロ」記者発表会の登壇・出展団体
8月27日に開催された記者発表会には、以下の企業・団体がトークセッションへの登壇やブース出展を通じて参加しました。
【トークセッション第1部「シュープロの描く未来」】
ファシリテーター 東京大学大学院 鎌田真光准教授
- 株式会社アシックス 副社長 千田 伸二氏
- 埼玉県戸田市 市長 菅原 文仁氏
- GMOメディア株式会社 代表取締役社長 森 輝幸氏
- 株式会社JTB 執行役員 福井 貴裕氏
- ゼビオホールディングス株式会社 副社長執行役員 中村 考昭氏
【トークセッション第2部「シュープロ×ライフスタイル」】
ファシリテーター 東京大学大学院 鎌田真光准教授
- 株式会社カーブスジャパン 常務執行役員 齋藤 光氏
- 香川県 健康福祉部 次長 和田 朝子氏
- 株式会社チヨダ 上席執行役員 マーケティング総括本部長 安立 邦広氏
- 日本郵政株式会社 スポーツ&コミュニケーション部 風戸 啓希氏
- 日本航空株式会社 人財本部 ウエルネス推進部 フィットネストレーナー 藤田 和氏
- ミズノ株式会社 アスレティック事業部ライフ&ヘルスマーケティング部 部長 中菊 昌之氏
【ブース出展】
- 香川県
- GMOメディア株式会社
- 株式会社JTB
- 株式会社SPEED STAR
- ゼビオ株式会社
- 株式会社チヨダ
- デサントジャパン株式会社
- 日本郵政株式会社
- ミズノ株式会社
- スポーツ庁
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