ビジネスパーソン向け特集
ビジネスパーソンに向けた「ライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進」をご紹介
「ここスポ」は、スポーツ庁が運営するポータルサイトです。
日常生活で気軽にスポーツを楽しむための機会や場所、イベント情報を提供しております。ここスポが皆さんの心身の健康を高め、ひいては充実した生活へのきっかけとなれば幸いです。
現代のビジネスパーソンにとって、慢性的な過度な疲労やストレス、肩こり・腰痛などは避けて通れない健康課題の1つです。
これらの健康課題の解決に、実は運動やスポーツが鍵を握っていることをご存知でしょうか?
今回はビジネスパーソンを対象として、「ライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進」を紹介いたします。 ※ライフパフォーマンスの向上:それぞれのライフステージにおいて最高の能力が発揮できる状態
目次
1. スポーツ実施率について(令和6年3月19日時点)
令和5年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果によると、20歳以上の男女、週1日以上の運動・スポーツ実施率は52.0%です。これは前年度から0.3ポイント減少しております。詳細を見てみましょう。
〇 20歳以上の週1日以上の運動・スポーツ実施率(以下「スポーツ実施率」という。)は、52.0%(前年度から0.3ポイント減)。
〇 また、男女別では、男性が54.7%(前年度から0.3ポイント増)、女性が49.4%(前年度から0.8ポイント減)となっており
引き続き男性より女性の実施率が低い。
年代別では、20代~50代の働く世代で引き続き低い傾向となっている。
〇 さらに、週1日以上のスポーツ実施率は、20代~50代の働く世代で男女差が拡がっており、
男性では前年度を上回ったのに対し(50代は前年度と同じ)、女性は前年度を下回った。
〇 20歳以上の年1日以上のスポーツ実施率は、76.2%(前年度から1.3ポイント減)。
〇 1日30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上実施し、1年以上継続している運動習慣者の割合は、
20歳以上で27.3%(前年度から0.1ポイント増)。
〇 過去に一度でも障害者スポーツを体験したことがある割合は、7.1%(前年度から1.2ポイント増)。
令和5年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」で公表されたスポーツ実施率はこちらです。
※ 「スポーツの実施状況等に関する世論調査」は、過去に実施した世論調査と直接比較評価できるものではないが、同様の質問項目については過去の数値を参考として併記できるものとして扱っている(このため、平成27年度と平成28年度の間は調査方法に変化があったことから点線としている。平成28年度と平成29年度の間では調査方法に変化はないため実線としている。)
※ 各年度の調査における「この1年間に行った運動・スポーツの種目」については、スポーツの捉え方に関するその時々の状況を踏まえ、例示を行っている。
平成29年度においては、日常生活において気軽に取り組める身体活動を広く含むことを認識してもらうため、「階段昇降」、「ウォーキング」の例示として「一駅歩き」等を追記する見直しを行い、令和4年度においては、オリンピック競技種目やアーバンスポーツの状況等を踏まえ、「スケートボード」、「ブレイキン」等を追記する(既存の選択肢に併記する)見直しを行った。
スポーツ庁では、多くの人が「楽しさ」や「喜び」、スポーツを通じた健康増進等といったスポーツの価値を享受できる社会の構築を目指しています。
そのため、スポーツの実施に関し、これまで広く国民に向けた普及啓発や環境整備を行うなど、国民のスポーツ実施率の向上を推進してきました。
これまでの取組に加え、質的な視点を持った取組を更に推進することが重要であると考え、「ライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進」の実施に向けた取組を進めております。
本記事では、なぜライフパフォーマンスの向上を目指すのか、その目的と方向性を解説いたします。
2. 目的を定め、心身に多様な変化を与える
スポーツ実施の効果(体力向上・健康増進等)を高めるためには、心身の維持・向上が必要な機能に焦点を当て、運動・スポーツの効果や影響に着目し、それに適した方法や目的を定めた運動・スポーツ(目的を持った運動・スポーツ)を実施することが重要です。目的を定め、心身に多様な変化を与える運動・スポーツを実施し、それぞれのライフステージにおいて最高の能力が発揮できる状態(ライフパフォーマンスの向上)を目指すことによって、健康の保持増進はもとよりQOL(Quality of Life,生活の質)を高めることなど、生きがいのある充実した生活を送ることに寄与できます。
そのような観点から、スポーツ庁では性別・年齢・障害の有無に関わらず、多様な人々の“スポーツを通じたライフパフォーマンスの向上”に向けて、「目的を持った運動・スポーツ」を推進していくこととしました。
維持・向上させたい心身の機能は、筋骨格系、神経系、呼吸循環・内分泌代謝系及びメンタル系の4つに大きく分けられ、これらの要素に焦点を当てることによって、目的を明確化することができ、目的に合わせた運動・スポーツの実践につながります。
例えば、ウォーキングを実施する場合、要素ごとに焦点を当ててウォーキング方法に以下のような変化を加えることで、それぞれの要素が高まることが期待されます。
①筋骨格系
速度や歩幅を増大させたウォーキングは、下肢筋力向上等の運動機能向上に寄与
②神経系
不整地でのウォーキングは、姿勢制御能力等の向上に寄与
③呼吸循環・内分泌代謝系
ウォーキングの時間・頻度の増大は、有酸素能力の向上および動脈硬化の予防等に寄与
④メンタル系
一般的なウォーキングによって多幸感等の脳への変化、うつの抑制・認知機能の向上に寄与
このように、維持・向上させたい心身の機能を踏まえて、運動・スポーツの実施方法に変化を与えることで、心身の機能に多様な変化を与えることができ、結果として得られる効果や適応性が高まります。
このように、目的を明確化して運動・スポーツを実施することにより、心身に多様な変化を与え、運動・スポーツ実施の効果を高めることができます。
3. 運動すれば持っていた潜在能力を発揮できるようになる
北海道東川町の実証研究では、76名の住民の方に対して、腰痛予防を目的とした運動介入プログラムを3か月間実施したところ、腰痛の軽減を認めたほか、精神的・身体的健康度やプレゼンティーイズム指標の改善といった効果を認めました。
運動すると人々のライフパフォーマンスが高まるのか、運動器の機能が高まって腰痛や肩こりが減るのか。それを実際に地域の住民の方々に行ってもらい、効果を検証するというスポーツ庁の委託事業を我々早稲田大学が受けて、実証研究をやらせていただきました。
北海道東川町で住民の方76名に参加してもらいました。平均年齢51歳です。さまざまな評価を行って、運動をやってもらってどのくらい良くなるか、いわゆるビフォー・アフターの効果を検証しました。
エクササイズは、いわゆる筋トレ的な要素ではなく、目的はモーターコントロールを良くすること。体のバランス能力を高めるためのエクササイズをやってもらいました。四つばいになって骨盤を動かしたり、足を上げたり。背骨を一つ一つ動かしながら、起き上がったり寝転んだり。片足でバランスを保つような運動などをやっていただきました。
結果は、プレゼンティズムという言い方をするのですが、病気やケガがないときの仕事の出来が100%だとして、過去4週間の自分の仕事を評価してもらいました。
すると介入前は78%でしたが、介入後は85%に改善していました。皆さんの仕事の生産性が高まったんじゃないかということです。
腰痛については、腰痛ありが22名から15名に減りました。その腰痛の点数も、10点が最大で今の痛みを評価してくださいと言ったときに、介入前は3.6点だったのが介入後は1.6点に下がっていました。腰痛については、かなり効果があったと言っていいのかと思います。
肩痛や膝痛については、軽くなってはいましたが、統計学的な有意差まではありませんでした。また、柔軟性も評価しました。
SLR(下肢伸展挙上)と言って、仰向けに寝て足を持ち上げてハムストリングの柔軟性を見るのですが、介入前と介入後で変化ありませんでした。ですが、四つばいになって骨盤を前後に傾けるエクササイズをすると、体幹の深部筋(インナーマッスル)を使うのですが、介入前に比べて骨盤の傾きが大きくなっていました。つまり、より動かしやすくなったということです。皆さん今椅子に座っていますが、骨盤を前後に傾けることはできますか?うまくできない人が腰痛になりやすいと言っていいと思います。
この骨盤を動かす能力、モビリティと言っていいと思いますが、柔軟性は変わってないんです。ここがポイントで、骨盤の傾きを制限する筋肉の硬さは変わっていないですが、動かしやすくなった。介入前は、自分が持っている動かす力を最大限発揮できていなかったのです。それが3か月、運動することでできるようになった。今持っている潜在能力を、運動をすることで最大限引き延ばすことができる、という効果がこの研究結果から見ることができます。
また、本研究に参加した方からは、「車のバック駐車の時にすごく後ろが見えるようになった」などといった、日常生活への好影響を実感するコメントもありました。
目的を持った運動・スポーツの実施が、人々のライフパフォーマンス向上に繋がることが分かります。
4. まずは、ご自身の身体機能の状態をセルフチェックしてみませんか?
維持・向上させたい心身の機能の中でも、筋骨格系・神経系を含めた運動器の機能を評価・改善する方法の一つとして、スポーツ庁の室伏長官が考案・実演する身体診断「セルフチェック」動画があります。この動画を活用することで、仕事や家事・子育てで忙しい方でも、簡単に自身の身体機能の状態をチェックすることができます。「セルフチェック」動画をご活用いただき、あなたのライフパフォーマンス向上に向けた運動・スポーツ実施の第一歩として、自分の身体を見つめ直すきっかけにしてはいかがでしょうか。
老若男女問わず自分のペースで簡単に自分の身体の状態を知ることができるセルフチェック動画を公開中です。
これは室伏長官が独自に考案したメソッドで、11編の部位毎に自ら模範実演しています。
健康的な日常生活のために自分の身体を把握し、意識的に身体を動かすきっかけ作りを目的として制作しました。
模範動作ができなかった場合や身体の状態を改善するための動画も併せて公開中で場所を選ばず、道具も必要としない、気軽に自分の身体機能の状態を知るための身体診断ツールとして、ぜひご活用ください!!
5. ライフパフォーマンスの向上に向けて
忙しい毎日の中で、ほんの少しの時間を使って取り入れられる運動でも、目的を設定しそれに応じて方法を変えるなどの工夫を行うこと(「目的を持った運動・スポーツ」を実施すること)で、心身への様々な効果を発揮できます。
仕事や家事・子育てで忙しい方にも、運動・スポーツをすることで得られる様々な効果を知っていただき、ぜひ日々の生活に「目的を持った運動・スポーツ」を取り入れていただきたいと思います。
「ここスポ」では、スポーツイベントの情報を手軽に探すことができます。
目的を持った運動・スポーツだけでなく、自分に合った運動・スポーツを見つけて、少しずつ始めてみることで、自然と日々のパフォーマンスにも良い変化が感じられるかもしれません。
「ここスポ」と一緒に新しい一歩を踏み出してみませんか?